Vol.21
皆さま、こんばんは。岡山市南区妹尾で開業予定のさとう歯科クリニック院長の佐藤公麿です。
以前、歯並びや噛み合わせが、生涯にわたってご自分の歯で食事を楽むためには重要だということを書かせていただきました。
欧米では、昔から歯並びや噛み合わせが悪い場合は、幼少期から治療を受けることが一般的でしたが、最近では日本でも徐々に幼少期から矯正治療を受ける子どもが増えてきています。
歯並びや噛み合わせが悪い状態のことを『不正咬合』といいます。
不正咬合の原因は大きく2つに分けられます。
1つは遺伝による先天的な要因で、歯の数や大きさも、顎の大きさや形も、鼻の高さや顔の輪郭なども親の影響を受けます。遺伝よる不正咬合は、予防は難しく、必要があれば矯正治療を受けなければ改善はできません。
もう1つは、後天的な要因で、これは生まれた後の環境によって作られるものです。正しい知識を持つことで、不正咬合を予防することができます。
去年の夏に、京都で行われた【日本未病システム学会】に参加した際、
不正咬合の予防に関する非常に興味深い演題があったので、ご紹介させていただきます。
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以下、中村由貴子ら,日本未病システム学会雑誌,127-127,2016.より改変・引用
不正咬合を予防する子育ち10ヶ条・幼児学童期編
乳歯列が完成する3才頃から永久歯列に移行する12才頃まで
◆第1条 口を閉じて鼻で呼吸します。
口呼吸は上気道の炎症を惹起し,健康を害する上,上顎歯列狭窄・上顎前突等の原因になります。鼻疾患は放置せず,鼻呼吸が可能になるように治療することも重要です。
◆第2条 舌はいつも上顎につけます。
舌の位置・動きは上顎の形態的発育に大きく影響します。舌がしっかりと口蓋に接触することで上顎骨が側方に成長し,広く浅い口蓋,つまり広い口腔内が獲得されます。舌の先を上顎前歯の口蓋側歯肉(スポット)に軽く接触させ,舌全体が口蓋に接触していることで,上気道も拡がります。
◆第3条 食事は口を閉じて一口ずつ,左右でバランス良くしっかり噛みます。
咀嚼運動が咀嚼筋と,筋が付着している顎骨の発育を促します。その時に足底が接地していることも左右均等な咀嚼運動を促す点で重要です。
◆第4条 飲み込む時も口唇を閉じ,舌は上顎に沿わせます。
舌が口蓋に接触している正常嚥下では,舌筋の圧が上下顎歯列の外側への発育を促します。舌位の不正は開咬を生じます。
◆第5条 頬杖,あご杖をするのはやめます。
頬杖・あご杖により不適切な外力が顎骨にかかり,歯列の非対称な変形や下顎の偏位・交叉咬合をきたします。
◆第6条 指吸い,爪噛みはやめます。
指吸いや爪噛みにより開咬・上顎前突・下顎の側方編位といった不正咬合が生じます。
◆第7条 口唇を噛む,巻き込むことはやめます。
下唇を噛んだり巻き込んだりすることで下顎前歯の傾斜や後退,上顎前突を惹起します。
◆第8条 背筋伸ばして,姿勢を良くします。
頸部が前傾していると開口しがちになり,且つ頬杖を誘発します。
◆第9条 寝る時は仰向け寝で寝ます。
伏臥位・側臥位での就寝は頭部の重力が顎骨・歯列に加わり,顎発育・歯列に影響を及ぼします。
◆第10条 舌や口唇や顔全体の筋肉のトレーニングをします。
口腔周囲筋の筋バランスが歯列の発育・形態を左右します。
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お口の機能は、噛むこと(咀嚼)、飲み込むこと(嚥下)、息をすること(呼吸)という生命の根幹をなす重要な機能です。不正咬合を予防することで、それらのお口の機能を改善し、出来うる限り健康に導くことが、将来の様々な疾病の予防につながります。
こういった情報をお子様が幼少期の頃からご両親にお伝えし、実践していただくことで、将来不正咬合になることを予防し、健やかな育ちのお手伝いができればと考えています。
お口の健康を守り、人生を健康で豊かに。
さとう歯科クリニックでは、患者さまの健康のお役立ち情報の発信を継続していきたいと思います。