3Dレプリカを用いた自家歯牙移植

  • 歯の移植

Vol. 62 みなさま、こんばんは。院長の佐藤公麿です。

 

歯が欠損している部位に歯を補う治療方法の一つに、自身の親知らずなどの使っていない歯を移植する自家歯牙移植という方法があります。

 

よく『自家歯牙移植とインプラントのどちらがいいの?』というご質問を受けることがありますが、

文献的に両者の生存率を比較すると(文献によって生存率はばらつきがあります)、

自家歯牙移植が約90%(観察期間6年、Tsukibosi M., 2022)

インプラントが約95% (観察期間5年、Taylor, 2004)

とあり、概ねインプラントの方が優位であると言われています。

しかし、臨床の現場では単に生存率だけでは決められない様々なファクターがあり、多角的にそれぞれの優位性を検討した上で治療方法を決めることになります。

 

それでは、成功率が100%ではない自家歯牙移植の手術の成功率を高めるにはどの様な条件があるでしょうか。

様々な因子がありますが、成書による適応としては、以下とされています(以下、必ず上達自家歯牙移植・再植、平井友成著、クインテッセンス出版より引用)。

①移植歯と骨幅が合致する。

②移植歯の歯根形態が円錐形など単純な形態である。

③抜歯と同時に移植が行える。

④カリエスリスクが低い。

⑤若年者(40歳以下が望ましい)。

⑥歯根未完成歯の移植。

 

また、手術時の成功の大きなポイントは、移植歯の『歯根膜』へのダメージを如何に最小限にして移植を行うことができるかが挙げられます。

従来の方法では、移植床を形成する際、移植歯を何度か出し入れしながら適切な形態に移植床を削っていきます。この際に、移植歯を出し入れしたりすることで物理的に歯根膜にダメージを与えてしまったり、処置に時間がかかることによってダメージを負ってしまうことがありました。

 

一方で、事前に撮影したCBCTデータを用いて移植歯の3Dレプリカを作成しておけば、移植床の形成などの下準備の際には3Dレプリカを用いるので、移植の際に移植歯の歯根膜へのダメージも移植にかかる時間も最小限に抑えることができ、成功率を高めることに繋がります。

 

 

それでは、本日の症例です。

30歳代の女性の患者さまです。

「右下第一大臼歯部の歯のないところに歯の移植をして欲しい。」

というご希望で来院されました。

ご相談の上で、左上の親知らずを移植歯として、右下第一大臼歯部に自家歯牙移植をさせていただくことになりました。

事前に、CBCTを撮影して3Dレプリカを作成して手術に臨みました。

事前に作成しておいた3Dレプリカを繰り返し試適しつつ、移植床の形成を慎重に行いました。

3DレプリカはX線造影性がある仕様にして頂いていたため、移植歯を移植する前に3Dレプリカを移植床に挿入してX線検査で移植床の確認を行うことができます。

 

 

移植後約3週間以降に、マイクロスコープを用いて根管治療を開始し、約1〜3ヶ月後に根管充填を行います。

その後、歯の位置を整えてから仮歯を入れて噛み合わせを確認し、問題がないことを確認してから、最終的なセラミックの被せ物入れさせていただいて治療終了しました。

 

今後も、注意深く経過観察をしていきたいと思います。

 

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【担当医】

佐藤公麿

【治療期間】

自家歯牙移植手術からオールセラミッククラウンが入るまで約5ヶ月

【治療内容】

右下第一大臼歯部に左上智歯(親知らず)を自家歯牙移植

【費用】

自由診療 約20〜25万円

【リスク・副作用】

手術後の出血、腫脹などの合併症を伴うリスクがあります。また、自家歯牙移植後に歯が生着しないケースも稀にあります。

術後に歯根吸収やアンキローシスを起こすことがあります。

セラミッククラウンが割れることがあります。

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(臨床写真の掲載については、患者さまに掲出の同意を得ております。)

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