Vol.64 みなさま、こんばんは。院長の佐藤公麿です。
現在、歯を失う原因の第一位は、『歯周病』です。
また、ギネスブックでも歯周病は『世界で最も一般に蔓延している感染症』とも言われています。
日本で「平成28年歯科疾患実態調査」を元に、歯周病患者数を推定すると約7,000万人の方が程度の差こそあれ歯周病に罹患していると言われています。
しかし、同じ資料を元に歯周病の継続的な治療を受けている患者数を推測すると約400万人しかおらず、歯周病にかかっている方の10%未満の方しか歯周病の治療を受けていないのが日本の状況であることが伺い知れます。
歯周病は『沈黙の病気』とも言われており、歯周病が重症化(歯を支えている歯槽骨の吸収が進行)するまでなかなか自覚症状がありません。その為、多くの方が自覚なく歯周病を進行させてしまい、歯が揺れたり噛みにくいと感じたりして歯科医院を受診した時には、歯を抜かなければならないほど重症化していることも珍しくないのです。
今後、このような事実を多くの方が知り、歯科医院への健診率や受診率がアップし、悪くなってから治療を受けるのではなく、症状のない時から歯科医院に通院して頂き、生活習慣や口腔衛生習慣改善の指導を受けて頂くことで、疾患の予防に努め、ご自身の健康に対して自立する方が増えていけば良いと考えています。
ということで、本日の症例です。
初診時、30歳代後半の男性の方で、歯肉からの出血や歯の揺れを主訴に来院されました。
歯周組織精密検査をしてみると、4mm以上の歯周ポケットが61.7%あり、歯周ポケット内の炎症の面積を表すPISAが1831.5㎟と重度の歯周炎に罹患していることがわかりました。
また、デンタルX線写真検査を行うと、全顎にわたり重度の歯槽骨吸収を認めました。
これらの検査結果から、広汎型慢性歯周炎(ステージⅢ、グレードC)と診断を行い、患者さまと歯科衛生士と連携して歯周病治療を開始しました。
患者さまの非常に良好な口腔衛生(ブラッシングやフロッシング)に大いに助けて頂き、動的治療は約1年で終了し、歯周状態は改善して、定期的なSPTに移行して現在で4年が経過しております。
辺縁歯肉の炎症は消退し、歯肉は引き締まったピンク色になりました。
また、治療後の歯周組織精密検査では、PISAは100㎟以下になり、歯周状態は劇的に改善しました。何より、患者さまのブラッシングのレベルが非常に高いことがわかります。
最新のデンタルX線写真検査でも、歯槽骨吸収の進行は止まり、部位によっては歯槽骨の改善が見られています。
現在、当院の日本歯周病学会の認定歯科衛生士が担当し、定期受診を継続させていただいています。
本症例では、『歯周病が改善した!』と非常に喜んでいただき、奥様やお子様もご紹介頂き、ご家族で定期的に通院して頂いています(こういった事が本当に嬉しいです!)。
今後も、お口の健康を守るお手伝いができるよう、スタッフ一同日々精進していきたいと思います。
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【担当医】
佐藤公麿
【担当歯科衛生士】
伊原晴恵
【治療期間】
動的治療は約1年間、その後は生涯にわたる口腔内管理を継続。
【治療内容】
歯周基本治療後に、歯周外科治療、口腔機能回復治療を行い、現在SPTを行なっています。
【費用】
本症例の治療は、すべて保険治療の範囲内で行いました。
【リスク・副作用】
・歯周外科治療後の出血、腫脹など、種々の合併症を伴うリスクがあります。
・免疫力の低下や口腔衛生の低下など、歯周炎進行のリスク要因が高まれば再発のリスクがあります。
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(臨床写真の掲載については、患者さまに掲出の同意を得ております。)