露出した歯根への根面被覆術 術後の痛みを軽くするために

  • 歯周病治療

Vol.69 みなさま、明けましておめでとうございます。岡山市南区妹尾のさとう歯科クリニック院長の佐藤公麿です。

 

外科手術と聞くと、『怖いなぁ。痛そうだなぁ。。』と心配される方が多いことと思います。

私自身、日本歯周病学会の歯周病専門医であったり、総合病院の口腔外科勤務が長かったこともあり、外科手術は比較的得意な方だと自認しておりますが、外科手術を行うメリットが行わないメリットを有意に超えていなければ、ファーストチョイスで患者さまにお勧めすることはありません。

 

しかし、日々臨床をしていると親知らずの抜歯や重度の歯周病の治療など、外科処置がどうしても必要な場面は多々あります。

そんな時、出来るだけ患者さまの不安や痛みを軽減できるように心がけていますが、本日はその中で露出した歯根への根面被覆術を行う際への術後の痛みを軽減するための術式の一つをご紹介させて頂きます。

 

患者さまは60歳代の女性の方で、右上奥歯が冷たいもので凍みるという、いわゆる知覚過敏の症状でお困りでした。

当初、薄い歯肉がこれ以上退縮しないように、ブラッシング方法や口腔清掃器具について指導をさせて頂きましたが、知覚過敏症状は改善しませんでした。

そのため、知覚過敏用の薬剤を塗布したり、知覚過敏用の歯磨剤を使用して頂いたりもしましたが症状は改善せず、根面被覆術を行うことことを希望されましたので、黄色い丸の部分に結合組織移植を用いた根面被覆術を行いました。

 

 

結合組織を口蓋から採取する術式には様々なものがあります。過去にも私自身色々な方法を行ってきましたが、最近は上皮ごと結合組織を採取し、口腔外で上皮層と結合組織層に切り分ける方法を行っています。

そして、その上で切り分けた上皮層を口蓋に戻して縫い付けるようにすると、術後の治癒が良く、術後の痛みもほとんどないと言われることが多くなりました。

 

本症例は現在術後2.5ヶ月ほどですが、歯肉退縮していた歯根面は被覆したことによって知覚過敏の症状は無くなり、患者さまに喜んでいただくことができました。今後も、メインテナンスを通じて注意深く経過観察を行っていきたいと思います。

 

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【担当医】

佐藤公麿

 

【治療期間】

手術当日に1回外来受診をしていただいた後、消毒や抜糸処置に2-3回、その後は定期的な術後経過観察をさせて頂いています。

 

【治療内容】

右上第一小臼歯から第一大臼歯の歯肉退縮に対して、口蓋から採取した上皮下結合組織(CTG)を移植し、歯冠側に歯肉を移動させる術式で手術を行いました。手術時間は約1時間で、術後の痛みもあまりなかったとのことでした。

 

【費用】

自由診療 110,000円(税込)

 

【リスク・副作用】

術後、CTGを採取した口蓋から出血を伴うことがあります。また、外科処置のため術後疼痛をある程度伴うため、痛み止めを服用していただくことがあります。

術後、オーバーブラッシングなどの過度な機械的刺激を繰り返すと、再度の歯肉退縮を引き起こす可能性があるため、手術部位へ適切な清掃を行う必要があります。

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(臨床写真の掲載については、患者さまに掲出の同意を得ております。)

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