Vol.87
みなさま、こんにちは。さとう歯科クリニック院長の佐藤公麿です。
本日は、30歳代男性の患者さまに行った精密根管治療の症例をご紹介します。
主訴は「右上の奥歯がなんとなく痛い」「歯ぐきにできものがある気がする」とのことでした。検査の結果、右上第一大臼歯(6番)の歯肉にサイナストラクト(膿の出口)が形成されており、歯冠部には大きなう蝕が確認されました(写真左)。
マイクロスコープを用いてさらに詳しく精査したところ、髄床底に穿孔(穴)があり、金属が詰められていました(写真中央)。また、これまで治療されていなかったMB2(第2内側頬側根管)の存在も確認されました(写真右)。これらの問題を放置しておくと、感染がさらに進行し、歯の保存が難しくなってしまう可能性があります。
穿孔部に関しては、生体親和性の高い材料を用いて確実に封鎖し、感染の再発リスクを最小限に抑えました。未治療だったMB2も含め、すべての根管を拡大・洗浄・消毒し、再感染防止のため根管充填を行いました。
治療から1年後のCBCT(3D画像)で再評価を行ったところ、初診時に認められた根尖病変が治癒傾向を示していることが確認できました。歯ぐきに見られた腫れやサイナストラクトも消失し、患者様は「違和感が完全になくなった」と非常にご満足いただけました。
臨床写真とX線画像の比較
治療前と治療後1年の変化を以下の画像でご覧いただけます。
【治療についての詳細】
治療期間:約1年(全4回)
※根管治療終了後も、治癒傾向を慎重に確認するために経過観察期間を長めに設けました。
費用:精密根管治療(既根管治療歯)132,000円(税込)
使用機器・材料:
・歯科用顕微鏡(マイクロスコープ)
・ラバーダム防湿
・生体親和性材料による穿孔封鎖
・ニッケルチタンファイルによる根管拡大・形成
【リスク・副作用について】
・根管治療は精密な処置を行っても100%の成功が保証されるわけではありません。
・根の形態が複雑な場合や破折がある場合には、**再発や外科的処置(歯根端切除など)**が必要になることもあります。
・治療後、一時的に咬合時の違和感や鈍痛が続く場合がありますが、ほとんどの場合は数日〜数週間で軽快します。
今回ご紹介したように、マイクロスコープを活用した精密根管治療では、従来の治療では見逃されがちな穿孔や未処置根管を発見・処置することができ、結果として歯を抜かずに残すことが可能になります。
「以前治療した歯がまた痛む」「歯ぐきが腫れている」「レントゲンで影があると言われた」といった場合には、ぜひ一度、当院にご相談ください。
お口の健康を守ることは、将来の全身の健康にもつながります。
さとう歯科クリニックでは、一本でも多くの歯を残すことをモットーに、科学的根拠に基づいた丁寧な診療を行っています。
※本症例の写真および画像は、患者様ご本人の同意を得た上で掲載しております。